双極性障害って、どんな病気?
双極性障害(躁うつ病)は、躁状態とうつ状態という、2種類の「病相」を繰り返す病気です。躁状態とは、うつとは逆に、気分が著しく高揚した状態のことをいいます。つまり、双極性障害とは、気分の落ち込みと高揚を繰り返す病気ということになります。
はっきりした躁状態がある場合は双極I型障害と呼ばれ、軽躁状態(軽い躁状態のこと)とうつ状態を繰り返す場合は、双極II型障害と呼ばれます。軽躁状態は、むしろ調子の良い状態だと本人が感じたり、まわりから見てもそう見えることことが多いため、双極性障害ではなく、うつ病だと判断されがちです。
では、双極Ⅰ型障害よりも双極Ⅱ型障害の方が良いのかと言えば、一概にそうは言えません。再発率などは、双極Ⅱ型障害の方が高いと言われています。
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双極I型障害と双極II型障害のそれぞれの特徴は?
双極I型障害は、激しい躁症状が特徴で、社会生活にも影響を及ぼします。激しい[うつ]と[躁]という両極端な症状を繰り返しますが、うつ症状の期間のほうが一般的に長く、躁状態の期間はわずかです。双極II型障害は、躁状態が軽い分、診断のむずかしい病気です。軽い躁症状は見過ごされることがあり、単極性のうつ病と区別がつきにくいため、診断は慎重に進める必要があります。
[1] 双極I型障害
- ・躁症状がつづく期間が7日以上で、II型より(4日間)長い
- ・躁症状が重症になると、入院が必要になることがある
- ・躁症状によって、社会生活や仕事などの機能が障害がおこる
- ・躁の期間より、うつの期間のほうがずっと長い
- ・自殺の危険度は、うつ病より高い
[2] 双極II型障害
- ・症状が出ていない時期は、病前の機能をとり戻す可能性が高い
- ・循環気質(面倒見が良い、社交的、ほがらか)の傾向が強い
- ・うつ症状が慢性化しやすい
- ・不安障害を併発しやすい
- ・軽い症状が長期間つづく
- ・自殺の危険度は、I型よりもさらに高い
- ・うつ症状の時期は、おっくう感があり、過眠、体重増加の傾向がある
躁状態とうつ状態の主な症状
[1]躁症状
- ・誇大妄想
- ・睡眠欲求の減少
- ・多弁
- ・急速な思考
- ・注意力散漫
- ・活動レベルの増加
- ・痛ましい結果をまねく行動
(浪費、無謀な投資、危険行為、違法な行為、物質の乱用、逸脱した性行為)
[2]うつ症状
中核となる精神症状
- ・憂うつ感
- ・興味、喜びの喪失
思考面での症状
- ・思考力の低下
- ・自己否定
- ・自殺念慮
意欲面で症状
- ・おっくう感
- ・イライラ感
身体面での症状
- ・体重の増減
- ・睡眠障害
双極性障害を特徴づける躁症状ですが、I型とII型ではレベルが違います。
病気に気づくため、特に軽躁のあらわれ方を知ってください。
双極性障害の治療
双極性障害の治療目標は、
- [1]再発を防ぎ、普通の社会生活を送れるようにする
- [2]躁状態を早期にコントロールし、社会生活への影響を最小限にとどめる
- [3]うつ状態での自殺を予防し、苦痛を減らす
の3つです。
双極性障害では、うつ状態が重度になると、生きていても仕方がないとの思い(希死念慮)を募らせる患者さんも少なくなく、最悪の場合、自殺という事態にもつながりかねません。こうした希死念慮は、うつ状態でしばしば見られる症状の一つですが、治療すればすっかりなくなります。
双極性障害治療の心構え
双極性障害は、全く治療しないで放置すれば、多くの場合再発します。これは大変な病気だ、と驚かれるかも知れませんが、幸いなことに、その再発を防ぐ薬がいくつもありますから、心配はいりません。軽く考えがちな方もいらっしゃいますが、双極性障害にかかったことを事実として受け止め、これを受け入れることは、治療の出発点です。
双極性障害と家族
家族は、躁状態を迷惑と思う一方、うつ状態は軽く考えすぎる傾向があります。一方本人は、うつ状態は強く訴える一方、躁状態を軽く考えるのが普通です。
そのため、どうしても家族と本人の間で、意見が食い違いがちです。そのため、双極性障害の患者さんがいるご家族の中には、話をするたびにけんかになってしまうという家も少なくありません。
しかし、このような家庭内のストレスを慢性的に抱えていると、再発をくりかえしやすくなり、これがまた家族のストレスになる、という悪循環に陥ってしまいがちです。
双極性障害の治療は、患者、家族、医師の三者による、病気のコントロールという一つの目標に向かった共同作業なのです。