広汎性発達障害は、発達障害の1つで、脳の認知機能の偏りによって起こる障害です。先天性の障害ですので、大人になってから気付くことはありますが、大人になってから発症することはありません。
発達障害という言葉自体が広く認知されていなかったので、「少し変わった子」というような印象でしか理解されておらず、大人になり、より複雑なコミュニケーションを要求されるようになるつれ、また発達障害という言葉自体が世間で広く認知されていくのに合わせて、初めて気づくというケースが少なくありません。
広汎性発達障害とは
広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders :PDD)は、自閉症、高機能自閉症、アスペルガー症候群、レット障害などの発達障害の総称のことです。なお、アメリカ精神医学会発行の手引き書「DMS-5」では、自閉症の特徴を持つ発達障害を「自閉症スペクトラム」と総称し、現在では「広汎性発達障害」という呼称は用いられていません。また、10人に1人が「広汎性発達障害」の特徴に当てはまると言われており、決して珍しい障害ではありません。
大人の広汎性発達障害の特徴
ローナ・ウィングというイギリスの児童精神科は、自閉症スペクトラムの特性として以下の3つの点を挙げています。ここでは、大人の例に当てはめて紹介していきます。
①社会性の問題(対人関係をつくるのが難しい)
社会性とは、社会生活を営む能力のこと、つまり「他人との関わり」です。広汎性発達障害の人は、他人への関心が薄いことが多く、社会性の問題が生まれがちです。
例えば、こだわりが強く「マナーや暗黙のルールが理解できなかったり」、思い込みが激しく「自分の考えと違った回答に納得が出来ない」などの特徴が挙げられます。大人になったからといって、社会性の能力が自然と上がるわけではありません。
例)上司に対し、必要以上に非を責めるなど。
②コミュニケーションの問題(コミュニケーションをうまく取ることが出来ない)
心の距離感が分からず、必要以上に顔を近づけて話したり、「相手が言われたくない言葉を悪気なく言ってしまう」のも特徴の1つです。また、「言葉の微妙なニュアンスや慣用句が理解できず、言われた言葉をそのまま受け取ってしまう」こともあります。
例)顔に泥を塗るという慣用句に対し、「泥なんかついてないよ」と答えるなど
逆に、相手に嫌われることを恐れ、「相手に過剰に丁寧に接してしまう」特徴を持つ人もいます。これもまた、大人になり、コミュニケーションの経験が増えたからといって、改善されるというものではありません。
③想像力の問題(興味の範囲がせまく、こだわりが強い)
こだわりが強く「臨機応変な対応が苦手」な事が特徴です。自分の考えや行動を本能的に優先することが原因です。そのため、相手や状況が、自分の行動によりどう変化するかを想像することが難しく、(一般的には予想がつくような出来事であっても)自分が想像もしない出来事が突発的に起こったことになり、パニックを起こす場合もあります。これもやはり、大人になり、多くの経験を積んだからといってパニックが収まるということは断言はできません。
例)自分の中で決まった順序が崩れると、理解が追い付かずパニックを起こしてしまうなど。
もしも広汎性発達障害の特徴に当てはまると感じたら
大人になり、社会に出たり恋人ができてから、生きづらさや辛さが出て、広汎性発達障害に気づくこともあります。例えば、職場で、うまく連携が取れずに仕事のミスが増えたり、恋人関係になった相手とお互いの理解が追い付かずに、辛い思いをしたりすることもあります。
広汎性発達障害発達障害の診断には精神科・心療内科などを受診する必要があります。すべての病院で診断が可能なわけではないので、どうすれば良いのかわからない方は、以下のような支援センターに相談されてはいががでしょうか。
障害という言葉に抵抗があるかもしれませんが、診断される事により自身の特徴の理解が深まり、職場に合理的配慮(障害の特徴に合った配慮)を求めることが出来ます。また、「今まで何故できなかったのか」という心配も原因が分かればなくなることでしょう。
また、発達障害は、その特徴が原因となり、うつ病などの精神疾患の2次障害を発症させることがあります。広汎性発達障害の特徴にあてはまり、それが原因でうつ病などの精神疾患を患っているという方は、発達障害の検査を受けてみるのも手です。
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