こんにちは!就労移行支援事業所CONNECTの園田です!
発達障害とは、脳の機能の偏りによって起こる症状で、「曖昧な言葉が理解できない」「感情表現ができない」など人によって様々な特性があります。その特性が、「生きづらさ」や「働きづらさ」を生み出す要因になります。
今回のコラムでは、発達障害とはどのようなものなのか、種類と症状、そして近年多く耳にする「大人の発達障害」についての説明を通して、「あなたがあなたらしく働くために必要なこと」を解説します。
- 発達障害の種類について知りたい人
- 発達障害の検査について知りたい人
- 発達障害の支援制度や機関について知りたい人
この記事に興味のある方のオススメ動画はコチラ▼
発達障害とは?
発達障害は「注意欠陥多動性障害(ADHD)」「自閉症スペクトラム(ASD)」「学習障害(LD)」の3つからなる障がいです。発達障害の原因は、発達の遅れということではなく、生まれつきの脳機能の発達の偏り(特性)による障害です。得意・不得意などの発達の凸凹が大きく、苦手なことや上手くできないことが多く、社会生活に困難が発生します。
また発達障害は、本人の特性とその人が過ごす環境や人との関わり方によりミスマッチが発生することで、生きづらさを感じてしまうこともあります。前述したように、脳機能障害であるため、外見からは分かりにくく、症状や困りごとは人それぞれ異なります。
発達障害は長所と同じく生まれながらの特性であるため、「完全に治す」ことは出来ません。しかし、特性を本人や周囲の人が理解し、環境を調整することで、本人の抱える問題は軽減することはできるのです。
《例》
「今度の会議の資料作っておいて」と言われた時、「今度の会議っていつの?」「何枚?」「いつまでに?」と思った方
発達障害特有の曖昧な表現が苦手という特性が見られます。
曖昧な表現が苦手な方への指示の出し方は、「9/14の経営会議の資料を9/10までに12枚作成してください。」と具体的に伝えてもらうことで、安心して仕事に取り組めるようになります。
このように、「曖昧な表現が苦手(特性)」を治すことはできませんが、周りから「具体的に指示(配慮)」を受けることで、うまく社会生活を過ごすことができます。生きづらさや困難を感じているようであれば、原因を知るため一度医療機関に受診してみましょう。
発達障害の診断方法
近年ではインターネットで簡単に発達障害のセルフチェックを行えるようになっていますが、正しい診断を行うには医療専門機関にて検査をし、その結果をもとに医師が診断をすることになります。
《診断までの流れ》
① 診察
発達障害は生まれつきの特性のため、幼少期や学童期の情報(成育歴)が重要です。
子供の頃の対人スキルや共感性、運動技能などの生育歴。
大人になってからの生活習慣、仕事、社会での適応力、現在の困りごとの経緯等について質問されます。
② 検査
診察後、検査が行われます。
検査には様々な種類があり、一般的に、ウェクスラー式知能検査(WAIS)がよく用いられます。WAISでは、言葉の知識と能力、聴覚的な情報処理能力などの「言語性IQ」、
先を読み物事を進める能力、視覚や空間的な情報処理能力といった「動作性IQ」などがあります。
③診断
医師が診察や検査の結果を総合的に判断して、診断します。診断基準としてはDSM-5やICD-10が一般的に用いられます。
大人の発達障害対応した診断ができる精神科医は、まだ少ないため、あらかじめ病院やクリニックに「大人の発達障害について診断できるのか」と問い合わせするか、地域の発達障害者支援センターなどが公表している医療機関に受診してみると良いでしょう。
発達障害の著名人
突然ですが、この方をご存知ですか?
(引用元:https://www.crank-in.net/news/76316/1)
有名なハリウッド俳優「トム・クルーズ」さんです。
彼は、発達障害LD(学習障害)の一つである難読症を公表しています。難読症とは、文字を認識して理解することが苦手なため、セリフは録音したものを聞いて覚えるという独自のやり方で克服し、ハリウッドスターとして数々の映画に出演しております。
他にも、女装家のミッツ・マングローブさんもLDを公表しており、すべて絵にしてイメージで捉えて勉強していたそうで、その結果、慶応義塾大学にみごと合格し、今もテレビ番組で活躍しています。
その他でいうと
●40歳になって初めて発達障害の診断を受けたアナウンサーの小島慶子さん
●モデルでタレントの栗原類さん
大人の発達障害
大人の発達障害という言葉がありますが、前述したように発達障害は生まれつきの脳の障がいであるため、大人になって急に発達障害になることはありません。子供の頃は生活や学業に大きな影響がない場合や、周囲から「個性」と捉えられ、気づかれなかったのでしょう。
しかし、大人になり、社会に出ることで、さまざまな制約や要求に自分で解決しなければならない状況に置かれ、仕事や人間関係がうまくいかずに受診し、発達障害と診断されるケースのことを「大人の発達障害」と言います。
大人の発達障害に関する詳しく解説した関連記事もご確認ください!
【関連記事】発達障害は大人になってから気づくことも!大人の発達障害について徹底解説▶
発達障害の種類
ここからは発達障害の種類と特徴について説明します。より詳しく内容を知りたい方は「発達障害の種類を知りたい!種類ごとに特徴・要因を詳細解説」の記事からご覧ください。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
「不注意優勢型」「多動性・衝動性優勢型」「混合型」の3つの型があり、混合型が最も多い人数です。
・「不注意」の特徴:約束を守れない、注意が散漫する、整理整頓が苦手、ケアレスミスが多い、集中力が続かない等があります。
・「多動性・衝動性」の特徴:落ち着きがない、相手の話を遮る、せっかちであり順番を待てない、感情の起伏が激しくカッとなりやすい、衝動買いをする等があります。
自閉症スペクトラム症(ASD)
自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群といった自閉症の特徴を持つ発達障害の総称のことです。総称名として広汎性発達障害と呼ぶこともありましたが、DSM-5により、自閉症スペクトラムという診断名で統合されました。
3つ組の障害と呼ばれ、
② 意思疎通が正しくできない「コミュニケーション能力の欠如」
③ 次に何が起こるのかという「想像力の欠如」
見えます。また、知的障害やてんかんなどの併存が見られる人もいます。
学習障害(LD)
知的または聴覚、視覚の問題がないにも関わらず、「文字を読む、書く、話を聞く、話す、計算する、理論的に考える」という能力の一部が著しく苦手という特徴があります。
種類としては、
●文字を書くことが苦手な「書字障害」
●計算が苦手な「算数障害」
二次障害のうつ
発達障害の特性をきっかけとして、うつ病や不安障害といった二次障害が起こるケースがあります。
この場合一次障害は発達障害で、それに起因してうつ状態となったのなら二次障害となります。注意しなければいけないのは、表面に出てくるのは、うつ症状のほうが強いため、発達障害があることが分からないまま医療機関に受診するケースが見られます。
医師が表面的な症状だけを捉えてしまうと、うつ病や不安障害といった二次障害の診断しか受けられず、それに対する治療しか受けられません。症状がなかなか治癒しない場合は、二次障害によって根本の原因である「発達障害」が隠されている可能性も考えてみてください。
発達障害の支援について
ここでは、自分、もしくは自分の子供が発達障害の診断を受けた際に受けられる制度や機関について、説明致します。
制度
障害年金
障害年金は病気やけがで障害が残った場合など受け取れる制度です。
原則として国民年金加入中に障害の原因となった病気やけがの初診日がある場合には「障害基礎年金」が、厚生年金加入中に初診日がある場合には「障害厚生年金」が支給されます。
障害年金には、初診日前の期間を対象とする保険料納付要件があり、未納期間が長い場合には支給されないケースもあります。
障害年金についてもっと知りたい方は関連記事をご覧ください!
【関連記事】障害年金の受給条件や、申請の流れをまとめて解説▶
自立支援医療
自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度のことです。
制度を利用する際は、通院中のドクターに診断書を作成してもらい、市町村の障害福祉課で手続きが必要です。
精神保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、一定程度の精神障害の状態にあることを認定するものです。
発達障害でもこの精神障害者保健福祉手帳を取得できます。取得によって障害者雇用での就職や障害者割引、控除などを受けられます。手帳を受けるためには、その精神障害による初診日から6か月以上経過していることが必要になります。
精神保健福祉手帳の申請方法等をしりたい方は下記の解説をご覧ください!
精神疾患って障害手帳とれるの?障害者手帳の申請(精神保険福祉手帳編)▶
機関
児童発達支援センター
心身の発達に支援が必要な就学前のお子さんを対象に、日常生活の基本的動作の指導、知識や技能の習得、集団生活への適応指導を行う「児童発達支援センター」があります。
それ以外の障がいのある未就学児へは、日常生活における基本動作や知識技術を習得し、施設に通う子どものケアを主とする、「児童発達支援事業」があります。さらに児童発達支援センターには、福祉サービスを行う福祉型と、福祉サービスに併せて治療を行う医療型の2種類があります。
放課後等デイサービス
主に6歳から18歳の障害のある児童を対象として、放課後や夏休み等長期休暇に通うことのできる施設です。生活能力向上のための訓練や社会との交流促進といったサービスを提供しており、施設によって様々なプログラムが行われています。
利用に際して療育手帳や身体障害者手帳は必須ではなく、専門家などの意見書を提出し必要が認められたら通うことができます。
障害者職業センター
障害者職業センターでは、カウンセラー等を配置し、障害者雇用に関わる支援・サービスを行っています。ハローワーク(公共職業安定所)、障害者職業・生活支援センターとも密接に連携しています。
職業特性などの検査をハローワーク経由で申し込むと、検査のアセスメントを行い、将来にわたっては、就労後の定着サポートとして、ジョブコーチの派遣も行っています。
障害者職業・生活支援センター
障害のある方の身近な地域において、生活に不安があり仕事につくことが難しい人に対しては生活支援を、就職前から就職後や就労定着まで働く事に対する職業支援を行う機関です。就業面と生活面の一体的な相談・支援を行う事によって、障害のある人の自立と安定した職業生活の実現を目指しています。
《職業面での支援》
・就業に関する相談支援
・就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習の斡旋)
・就職活動の支援
・職場定着に向けた支援
《職業面での支援》
・生活習慣の形成、健康管理、金銭管理等の日常生活の自己管理に関する助言
・住居、年金、余暇活動など地域生活、生活設計に関する助言障害者就業・生活支援センターのご案内
就労移行支援事業所
一般企業に雇用されることが可能と見込まれ、また企業への就労を希望する人を対象とする福祉サービスのことを言います。就労移行支援事業所の支援を受けられる年齢は18歳〜65歳未満までで、利用できるのは原則として2年までと期間の定めがあります。 就労移行支援の特徴としては職業訓練・職場探し・職場への定着支援の3つの役割があります。
就労継続支援事業
障害や病気のために一般企業や通常の事業所に雇用されることが困難な人々を対象とした福祉サービスのことをいいます。障がいのある方の就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。就労継続支援事業には「A型」と「B型」の2種類があります。
まとめ
発達障害という診断を受けることでどう感じますか?障害者という言葉に躊躇する方もいらっしゃると思います。しかし、今まで原因が分からず、人とは違う何かに対して不安を持たれてきた方からすれば、発達障害と診断されることによって安心感が手に入ることも事実です。
あなたらしく働ける環境を整えて活躍してみませんか? あなたの抱えている「生きづらさ」の原因を把握し対処して、よりよい生活を送ってほしいと思います。
- 発達障害とは脳機能の発達の偏りにより特性が現れる障がいのこと。大きく①自閉症スペクトラム(ASD) ②注意欠陥多動性障害(ADHD) ③学習障害(LD)の3種類に分けられる
- 2次障害のうつに注意 発達障害の特性をきっかけで、日常生活や社会生活上の問題が生じた結果、精神的なダメージでうつ病や不安障害のような2次障害が起こることも
- 発達障害の方への支援制度や支援機関も用意されている: 障害年金・自立支援医療といった制度、発達障害者支援センターなどの機関がある
▼参考記事
最新図解大人の発達障害サポートブック ナツメ社
大人の発達障害 仕事・生活の困ったによりそう本 西東社