こんにちは!就労移行支援事業所CONNECTの臼井です。
本日は「アスペルガー症候群のこだわり」について解説します。
- アスペルガー症候群のご本人の方
- 身の回りにアスペルガー症候群の方がいる人
- こだわり行動をお持ちの方
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アスペルガー症候群の特徴
アスペルガー症候群とは、「自閉症スペクトラム(ASD)」のひとつに分類され、
「社会性」「言語コミュニケーション」「想像力」の3つの障害を持つ発達障害のひとつです。
言葉や知的等の遅れはありませんが、
●暗黙の社会的ルール
などを理解することが苦手です。その為、悪気なく一方的に自分ばかり話す、その場にそぐわない直球的な表現をしてしまう事があります。
※アスペルガー症候群は現在、自閉スペクトラム症(ASD)と表現されています。
社会性に関する特性
特徴として相手の気持ちを意図し、その場の空気やしきたりなどの暗黙の了解・社会のルールを理解する事が苦手です。また、自分の感情を表現することや、自分の発言や行動が与えてしまう印象を想像することが苦手な人も多くいます。その為、場の雰囲気にそぐわない素直すぎる、直球の発言をしてしまうこともあります。
この特徴から同年代の人との人付き合いがうまくできず、「周りと比べて浮いている」「空気が読めない」などと言われることがあります。
コミュニケーションに関する特性
言葉の発達に遅れはありませんが、
●言われた言葉をそのまま理解する
という特徴があり「例え」や「冗談」、「皮肉」、「慣用句」などを読み取ることができないことがあります。
独特なコミュニケーション方法を取るため、
●相手の言葉をそのまま繰り返してしまう
曖昧な質問に対して、それが何のことを聞かれているのか読み取ることができずに
●分かっていないのに分かっているつもりで会話を進める
といった傾向があります。
想像力・こだわりの強さに関する特性
柔軟な対応が難しい人が多く、
●行動パターンに強いこだわりがある
●新しい人や状況、予想外の事態への臨機応変な対応が苦手
●物事の一部分にこだわり、全体像を把握することが苦手
といった特徴から、想定外の行動をとることに抵抗を示し、パニックになってしまうこともあります。
アスペルガー症候群の「こだわり」とは
アスペルガー症候群のこだわりには大きく2パターンあります。
1つ目は「決めたルーティーン・ルールに関するこだわり」
2つ目は「興味がある事へのこだわり」です。
ここでの「こだわり」とは一般的なものと違い自身でコントロールがつくものではありません。簡単に言うと自分でやめようと思ってもやめられるものではないという事です。
自分の意志でもなければ、好みや正確によるものでも無い為にコントロールするのが難しいという事です。従ってこだわり行動を無理にやめさせようとすると本人にとってはかなりのストレスになる為無理にやめさせない事が大切です。
また、こだわり行動がある為一部分に集中してしまい、全体像が見えなくなってしまう傾向があります。
決めたルール・ルーティーンへの「こだわり」
前述の通りアスペルガー症候群の方は、ルールやルーティーンにこだわりがある為日常生活がパターン化しやすい傾向があります。その為予期せぬことが起きたり、日常と違うことが起きたりするとパニックになりやすくなってしまいます。
とあるNさんは食事の際にこだわりがあります。定食を食べる際、食べ物の減る量を均一にするという物です。このこだわりによって食事の時間が1時間を超えてしまう事もあり友人との食事になかなか行きづらいそうです。
また、別のEさんは朝7時に起き7時10分に歯を磨きというように分刻みで予定を立てています。これは毎日変更のないものであり、これが少しでもずれてしまうとパニックになってしまうそうです。このEさんは毎回同じ内容を繰り返す自身のことを「コンピュータのプログラム」と表現しています。
つまり、「いつもと同じ」という事がアスペルガー症候群のこだわりでもあります。
例えばいつも通っていた道が工事中で通れなかったりすると、急に立ち止まってしまいます。この時他の道を迂回するという事は考え付きません。他にもシャツのボタンは上まで留めるものだと思っていると季節、TPO関係なく全部留めることにこだわります。
このようにしていつも通りのルーティーンを守る事にこだわりをもっています。もちろんこれらすべてが悪いわけではありませんが、仕事において自分なりの順番を崩すことができない為に時間がかかってしまう事もあります。同様に社内ルールの急な変更や、やり方が変わる際にすぐに適応することができずにパニックになる、もしくは強いストレスを感じてしまう事があります。
仕事だけでなくプライベートの生活にも影響がある場合があります。旅行や日曜日など休日でいつもより少し長く寝ていられる場合であっても朝〇時に起きるというルーティーンの為平日、休日関係なく同じ時間に起きてしまい結果的に休みなのに休めないといった事態になってしまいます。
ここで説明したようにアスペルガー症候群の特性として、自分で決めたルール・ルーティーンを厳守するあまり全体像の一部分しか見えず遅れが生じたり問題が発生したりする事があります。
これらのルール・ルーティーンに関する「こだわり」に関して、自身でコントロールが付くものではありません。従って周囲の人たちは「そうしたい」もしくは「そうでありたいから」という理由で行っていることを理解してあげることが大切です。
興味があることへの「こだわり」
アスペルガー症候群のこだわりの特性としてある特定の物事に対して強い関心・興味を持つことがあります。人間だれしも特定の物(例えば服や靴、時計など)に興味を持つことは普通のことであり一般的です。アスペルガー症候群との違いは次のように定義されています。※厚生労働省自閉症スペクトラムのページより一部抜粋
つまり、いわゆる趣味の延長である「オタク」や「マニア」と呼ばれる人とは違い一部分のこだわりの為全体像が見えなくなる事がある。もしくは時間や周りを忘れるほど熱中してしまい日常生活に影響が出るほどに強いこだわりということです。
また、とあるCさんの場合日付に強い関心を持っています。例えば、夫婦で会話しているときに何年も前に行ったデートの日付や曜日まで記憶しているほどです。このCさんのような特性は、アスペルガー症候群の4人に1人と言われているサヴァン症候群という場合もあります。
他にも興味が変化していくパターンもあります。例えばTさんの幼少期は電車の路線図に興味を持っており、小学校低学年が終わる頃には数ある路線名や駅名を全て暗記できる程でした。中学生になる頃には電車を直接見ることに興味が移っていました。例えば、遠足や家族旅行で電車を見た際には必ず立ち止まり電車の説明をできるほどでした。大人になってからの興味は電車に乗る事に移っていきました。このように路線図の興味から始まり成長とともに興味が変化した結果、日常生活に支障の出ないいわゆる「趣味」の範囲に落ち着くこともあります。
アスペルガー症候群の興味についてはかなり極端なものが多いと言えます。ですが、紹介したように当初は限定された興味でも成長につれて興味の対象が変わっていくことがあります。また、興味がある分野の職種においては大きな成果を上げることもあります。例えば、文章を読むことに興味があれば文章校正の仕事などで他の人よりも高い集中力を長時間発揮し、成果を残すことも考えられます。それこそ興味を無理に矯正することは本人にとって大きなストレスになる場合がある為注意が必要です。
アスペルガー症候群の特性への関わり方
特性を長所として捉える
これまで説明してきたアスペルガー症候群の特性はマイナスの物ばかりではありません。むしろプラスに作用するものも多くあります。
ルールやルーティーンに関するこだわりで例えば時間を厳格に守る特性によって一定の時間の中で驚異的な集中力を発揮することがあります。
また、単純な作業でも本人の興味や特性に合いさえすれば他の人以上に集中して成果を上げることができます。
また、予定や数字に厳格なこだわりがある方は常に同じ作業が求められる字ごとにおいて毎回同じ手順で正確に作業をすることが可能なため非常に安定して成果を上げることができます。
また先に述べたように、アスペルガー症候群のうちサヴァン症候群である方についてはある分野において天才的ともいえる才能を発揮する場合があります。
無理にこだわりをやめさせず、段階的な対処を考える
何度も説明しているように、こだわり行動は本人の性格や好みというわけではありません。むしろ本人ですらコントロールすることが難しい為無理にやめさせることは適切ではありません。無理にやめさせることが強いストレスとなることもあり、人によってはかえってこだわりが強くなってしまう等の悪影響を及ぼす可能性があります。
こだわりに関しては基本的に段階を踏みながら社会生活に影響がない程度まで落ち着かせる事が適切です。特に予定外の変更があるような場合には事前にこれから起こる変更について示すことや1つ1つに理由を添えながら伝える事が大切です。
1番大切なのは本人の不安を無くしたり、やわらげたりすることです。行動に関することもそうですが時間に関しても変更があるとストレスになる場合がある為小さなことでも不安を払拭できるような説明が必要です。
まとめ
- アスペルガー症候群のこだわりは人によって様々です。
- 知的や言語の遅れが無いために発見が遅れやすいという性質もあります。
- 周囲の人はアスペルガー症候群の方のこだわりを理解してあげるとともに早期発見に向けての手助けをしてあげることが重要です。