こんにちは!
就労移行支援事業所CONNECT梅田の新谷です。
ASDの方で、
・今の仕事がうまくいかない
・仕事が長続きしない
・転職を考えている
など、悩んでいる方はいらっしゃいませんか?
そこで今回は仕事での対策方法や適職について解説していきたいと思います!
- ASDの人で、今の仕事がうまくいかないと悩んでいる人
- ASDの人で仕事が長続きしない人
- ASDの人で転職を考えている人
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ASDとはどのような障害?
ASDとは、「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」「自閉症」など、各名称で呼ばれていた障害を2013年以降、「自閉スペクトラム症(ASD)」とまとめて表現するようになった病名のことを指します。
ASDの原因について特定はされていませんが、遺伝的な要因が複雑に関与して起こる生まれつき(先天性)の脳機能障害だと考えられております。
そのため、親の育て方や愛情不足が直接的な原因ではないといわれています。
ASDの主な特性として、
・言葉をその通りに受け取り、冗談や例え話などが通じにくい
・暗黙の了解がわからず、融通がきかない
・いつもと同じ環境でないとそわそわしてしまう
・興味・関心の範囲が狭い
・感覚過敏、または鈍感 (音、光、臭い、触覚や痛み等の感覚が敏感または鈍感)
ASDの人が仕事で困ることとは?
ここからは、ASDの人が仕事で困ることを4つ挙げていきたいと思います。
①臨機応変な対応が苦手
ASDの人が臨機応変な対応が苦手と思われる理由は以下のことが考えられます。
・自分が決めた手順、興味のある事柄や活動に強くこだわる傾向がある
・拘りの強さから変化に対処することを苦手としており、決められた手順から外れるとフリーズ
したりパニックになる
・異動や業務内容の変更、また直属の上司や上層部の人間が変わった等の業務内容の変更
や人事異動への適応に困る
・気持ちの切り替えが苦手
②コミュニケーションが上手くとれない
ASDの人がコミュニケーションが上手くとれないと思われる理由は以下のことが考えられます。
・相手の都合を確認せずに話しかけてしまう
・相手と目を合わせて会話をすることができない
・空気が読めないため、雰囲気で感じ取りづらい
・「相手の気持ちを想像する」「暗黙のルールを理解する」など、自分の感情を場の空気に合わ
せて表現することが苦手
・空気を読まずに発言したり、周囲と足並みを揃えることが苦手(=チームを乱す)
上記のようなことが続くと、仕事上のコミュニケーションがうまくいかなくなり、チーム内で孤立するケースもあります。
③抽象的な表現が苦手
ASDの人が抽象的な表現が苦手と思われる理由は以下のことが考えられます。
・「適当に終わらせて」「会議資料をいつもより多めに印刷して」などの曖昧な表現を理解する
ことが苦手
・曖昧な表現では混乱を招き、指示の理解ができないため業務が進まなくなる
④1つの仕事にのめり込んでしまう
ASDの人が1つの仕事にのめり込んでしまうと思われる理由は以下のことが考えられます。
・行動や気持ちの切り替えが苦手なため過集中になりがちである
・過集中の影響で1つの仕事にのめり込んでしまい、他の仕事が疎かになる
仕事で実践できる対処法とは?
まず大切なこととして、ご自身の症状や特性や強み・弱みを理解した上で、苦手なことや配慮事項を事前に伝えておくことです。また、病院へ行き、医師の助言を仰いだり、福祉機関に相談する方法もあります。
ここからは仕事の中で実践的に活用できる対処法を4つご紹介していきたいと思います。
①「なぜ変化が起こるのか?」の目的を明確にする
目的を明確にするにあたって以下のことを参考にしてみてください。
・上司などに決められた作業内容が変わる際は、「変わる目的」を確認することが重要
・目的を明確にすることで、変化に対する不安が解消され、作業ミスや誤解が軽減する
・定期的に上司と相談して、今後の変更点を確認しておくことも重要
・主体的に取り組んでいくことで、変化に対応できる体制を作っておく
・物事の細部ではなく「本質」をみることで、見据えられていると少しの変化で動揺することが
なくなる
②相手と話す上でマイルールを決める
マイルールを決めるにあたって以下のことを参考にしてみてください。
・「まず会話の際は、肯定的な相槌を打つ」「相手の話が終わってから自分の話をする」など、
ルールはしっかり守るという拘りの強さを利用する。
・丁寧な言葉遣いを心がける
・相手の否定はできるだけしない
・会話の話題を自分から変えないようにする
・「自分の話したいことばかり話してしまう」「思ったことをストレートに言ってしまう」など、
自身のどういった言動が相手を怒らせやすいのか?の客観的なフィードバックを貰う
③具体的な計画、指示内容を確認する
具体的な計画、指示内容を確認するにあたって以下のことを参考にしてみてください。
・抽象的な指示があった際、「いつまでに終わらせないといけないのか?」「どういった手順で
やるのか?」といった具体的な数字や方法を聞く
・写真や図、絵や文字などの視覚情報で整理する
・口頭での指示を仰いだ場合、工程表やスケジュール表に落とし込んで貰うことや、小まめに
メモを取ることで対策する
④携帯などのアラーム機能を活用する
アラーム機能を活用するにあたって以下のことを参考にしてみてください。
・過集中で他の仕事に支障が出ないよう、次の仕事に移る10分前にアラームを鳴らす
・疲労をため込まないために、アラームを鳴らし10分休憩の時間を作る
・1時間毎に5分休憩を取れるようにアラームを設定しておく
ASDの人におすすめの職業は?
ASDの人は、仕事をする上で下記のような特徴や、業務内容が向いていると考えられます。
・関心のある分野に高い集中力を発揮する(専門性やこだわりを活かす)
・規則に従順で規範意識が強い(ルール、マニュアルに沿う)
・視覚情報や文字情報の処理に優れている
・特定の事柄や領域の記憶力に長けている
・臨機応変さを求められず、対人折衝が少ない業務
トラック運転手
基本的には1人で業務を行う職種で、人間関係のストレスが少ないです。車に関心があれば、運転が好きな方や、長距離運転が苦にならない方は過集中を活かすことができるかもしれません。
また、地図など視覚情報で処理できますので優位です。
法的にルールや決まりがあるため、曖昧な表現は少なく、仕事内容もシンプルです。
また、物流業界は今後も需要が見込める業界なので要チェックになります。
工場作業員
単純作業で黙々と集中して作業できます。
臨機応変さを求められることは少なく、マニュアル通り仕事をこなすだけで評価されることも特性を活かせられると考えられます。
また、ライン作業に関しては持ち場が設定されており、コミュニケーションを求められることも少ない現場になります。そのため、細部までこだわれるスキルを活かし、クオリティの高い商品を作ることが可能です。
経理
マニュアルに沿ってできることが多く、臨機応変さを求められにくい変化の少ない仕事です。コミュニケーション重視ではなく数字と向き合う仕事のため、業務の正確さで評価されます。視覚情報や文字情報が殆どなので処理に優れており、数字に対するこだわりを活かせます。
事務職
書類作成やデータ入力業務がメインになり、マニュアルに沿って作業できるのも特徴の一つです。
また、ASDの方は記憶力が長けていることから作業効率を向上させることができます。
一方で来客や電話応対が求められるとマルチタスクになるため不向きではあります。
しかし、障害者雇用の事務職では、来客や電話応対を配慮された求人が多いのが現状です。
研究職
研究には決まったルールやマニュアルがあるため、遂行しやすいです。興味のある分野には異常な集中力を発揮できます。そのため、特性上大きな成果を上げられる可能性があります。
特に、大学の研究職などは1つのテーマを長期的に取り組めますので、さらに過集中が発揮されると考えられます。コツコツと1人で取り組めるため、他人との関わりも少ないこともメリットの一つです。
翻訳
翻訳とは、指定の言語を別の言語へテキストベースで訳す職種です。臨機応変さを求められることも少なく、コミュニケーションもあまり必要ありません。
ASDの方は視覚からの情報処理能力が長けているため、興味がある人だと転職になる可能性も大きいです。また、こだわりを活かし、些細な言い回しの違いも納得する形で仕上げられます。
webデザイナー
視覚的な情報処理を活かせられます。こだわりを活かし、細部までこだわり抜いた質の高い商品を作ることができます。また、1日の殆どをパソコンの前で過ごすため、人とのかかわりが少ないのもメリットです。在宅で仕事ができることも魅力の1つです。
webライター
コミュニケーションはあまりなく、在宅での仕事がメインであるため、集中できる環境で作業ができます。文字からの情報処理能力に長けており、専門性が高い記事が書けるため、特定の分野においてはかなり深く書けると考えられます。
プログラマー
プログラマーは、プログラミング言語を用いて、アプリやサービス、システムを作る職種です。
ASDの強みでもある論理的思考が求められ、コミュニケーションが少なく、対人関係によるストレスも少ないです。
臨機応変な対応も少なく曖昧な表現もないため、混乱を招きにくいです。過集中により細部までこだわれるため、仕事を放棄せず最後まできちんと仕上げられるのも魅力です。
CADオペレーター
建築は曖昧な指示がなく、全て数字で大きさ等決まっており、ルールやマニュアルに沿って働けます。また、コミュニケーションも少なく、製図作業など、緻密さが要求される仕事内容がASDの特性に合っています。ASDの方のおすすめの資格としても「CAD利用技術者試験」があります。
ASDの方の就職事例
ASDの方におすすめの職業を様々ご紹介してきました。
そこで、当事業所での訓練を経てご就職された利用者様の体験エピソードを抜粋してご紹介致します。
事務職としてご就職されたH.Sさんの事例
就職活動の際には、「長く働けるか?」ということを常に考えておられ、特例子会社の事務職として就職されました。
企業研究の中で、手厚い配慮や業務面での徹底したマニュアルの整備など、自分に適した環境だったことが決め手になったようです。
前職では、
・「あれ」
・「この前」
・「適当に」
といったような抽象的な話に全く理解ができず、業務を進めていても全く違うことをしていたこともあったそうです。しかし、今では自身の障害を理解され、苦手としていた雑談などのコミュニケーションを取る練習等を経て、就労に繋がったと感じておられます。
飲食店の調理師としてご就職されたM.Hさん
飲食店で調理師のお仕事に就かれました。元々、調理に携わるお仕事を希望されており、一度は就職されたのですが、「報連相」が上手くできずに挫折されました。
当事業所で様々な訓練を行い、適正がはっきりわかったからこそ、もう1度ご自身の目標に進みたいと思われ再び調理師の道へ進まれました。
現在の夢はご自身で飲食店を持ち、経営されることです。「M.Hさんの周りの方々に来ていただき、思い出話や近況報告等、たくさん話をしてもらえる様な場所にしたい。そして、そこでご自身が作った料理を食べて貰いたい。」という夢を抱きながら勤務されております。
休職・退職時に利用できる経済的な支援制度
いざ転職活動をしようとしても、経済的な理由で活動できない方がいらっしゃるかもしれません。
そこで、ここからは経済的な支援制度をご紹介したいと思います。
傷病手当金
疾患や怪我で仕事を長期間休むときに収入が0になってしまうことを避け、生活を保障する為に支給される手当金です。ただし、「労災保険の給付対象とはならない業務外の理由による休職」に限られます。
保険組合の加入期間によって、その人の平均収入の3分の2の額、または月額28~30万円のいずれかが、最長1年6ヶ月まで支給されます。
失業保険(雇用保険)
失業中の生活を心配しないで新しい仕事を探し、1日も早く再就職できるように設けられた制度になります。窓口での職業相談・職業紹介を受けるなどの求職活動を行っていただいた上で、失業等給付を受け取ることができます。
この内、基本手当(いわゆる通常の失業給付)を受給するに当たっては、ハローワークにて手続きをして頂く必要があります。順序として、「傷病手当」→「失業保険」という流れで受け取っていただくのが最善かと思われます。
▼失業保険の詳しい情報は下記をご覧ください▼
【雇用保険手続きのご案内】ハローワークインターネットサービス
自立支援医療制度(精神通院医療制度)
精神疾患の治療のために、通院中の人や治療により症状が安定し、再発の予防目的で医療費の自己負担額を軽減する制度です。病名や所得に応じて、1ヶ月当たりの負担の限度額が設定されます。
各自治体のHPに医師の診断書、申請書等のフォーマットが載っておりますので是非ご確認ください。
障害者手帳
ASDのある方は、精神障害者保健福祉手帳を取得することができる場合もあります。申請には様々な条件がありますので、まずは主治医へご相談ください。障害者手帳を取得すると、程度に応じて様々な福祉サービスや税金の控除、公共交通機関の運賃や公共施設利用料の割引などを受けることができます。
また、障害者雇用という枠で、配慮や支援を得られやすい職場で働く選択肢も選ぶことができます。注意点として、通院後「6ヶ月」以上で申請が可能になります。
こちらも同じく、各自治体のHPに申請に必要な用紙のフォーマットが載っております。
また、自立支援医療制度と併せて申請される際、診断書は障害者手帳用1枚で済みますので、手間と経済的なことを考えると併せて申請されることをオススメします。
障害年金
障害や疾患で、生活や仕事に支障が出たときに支給される年金です。
在職中でも、症状により仕事が制限されていると判断された場合は、生活の一部を支援する額が支給されます。
対象となる疾病やケガは広範囲に渡り、障害等級や年金の加入期間によって受給額は異なりますが、障害者手帳の所持がなくても受給することが可能です。
生活保護
怪我や疾患などにより働くことが難しく、収入が不十分で生活に困った場合に、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための費用が給付される制度です。
受給にはそれぞれ条件がありますので、まずはお住まいの各自治体にてご相談ください。
まとめ
- リフレーミングを使い、マイナスと思っている所を活かせられる仕事がある
- 当事業所からもASDの方がご自身の特性を活かしたお仕事先へ就職されている実績がある
- 細部までこだわれるため、クオリティの高い仕事ができる
- 規則に従順で規範意識が強いため、まじめな方が多い
- 視覚情報や文字情報の処理に優れている
- 特定の事柄や領域の記憶力に長けている
- 経済的な理由から転職活動に踏み出しにくくても、公的扶助の制度を利用できる