こんにちは!
就労継続支援B型事業所CONNECTWORK天王寺の濵原です。
毎日、まだまだ暑いですが、いかがお過ごしでしょうか?
さて、皆さんは職場でうまくコミュニケーションが取りづらいといったことについて悩まれたことはありませんか?
例えば、
・発達障害という概念をより深く理解したい
・発達障害を持つ人との職場でのコミュニケーションに困っている
・発達障害者が経験する職場の問題や困難について知りたい
と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本日はその疑問を解決すべく、「発達障害を理解し、職場での問題を解決する方法」について解説します。
- 発達障害の人々と働くマネージャーや同僚
- 発達障害を理解し、より包括的な職場を作りたい企業の人事担当者
- 自分や身近な人が発達障害であると思われる方
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発達障害とは何か?
発達障害とは、生まれつきの脳機能発達に関する障害です。言語、学習、コミュニケーション、社会性などの発達に影響を及ぼします。この節では、一般的な発達障害の特徴と種類について説明します。
発達障害の特徴
発達障害は一般的には子どもの頃に診断されます。ですが、大人になるにつれ、症状が落ち着いたり、さほど目立たなくなる人もいます。しかし、近年では大人の発達障害も注目を浴びています。その多くは、子どもの間には発達障害に気付かれずに大人になられた方です。
これらの障害は、
・社会的コミュニケーション
・行動
・学習能力
・注意力
・問題解決能力
など、人が日常生活を適切に遂行するために必要なスキルに影響を及ぼす可能性があります。さらに、発達障害は個々の人により異なり、その症状や影響は人それぞれです。
社会的コミュニケーションと交流
認知や行動に偏りがあるため、人と相互的に関わる能力や意欲に欠けていたりします。また、社会マナーや暗黙のルールがわからないことがあります。さらに、場の状況を理解したり、人の気持ちを察したりすることができなかったりもします。
つまり、対人関係を築く上で必要なスキルを身に着けることに困っていることが多いです。グループでの行動時は、相手のペースや考えを尊重できないため、チームワークを乱すこともあります。
学習と注意力
発達障害のある人は大事な約束や予定をよく忘れてしまうことがあります。それは興味や関心がかたよるという特徴があるためです。自分の好きなことについては豊富な知識を持ち、とうとうと説明する人もいます。
その一方で、本人が興味のないこと、関心のないことは抜け落ちてしまうということになります。また、頭に浮かんだことをすぐに口に出してしまったり、気になった物を手に取ったりすることが優先されてしまう方もいます。
その結果、今取り組んでいる作業が後回しになってしまいます。うわの空になってしまい、気をつけていてもミスをしてしまうということがあります。
行動と感情調整
発達障害のある人の中には、喜怒哀楽の感情はあるのに表情や態度に表すことが苦手な方がいます。そのため、感情が人に伝わらず、誤解を受けることがあります。その上、親しみを表現することも苦手なため、親しくなった人でも敬語でよそよそしい態度を取ってしまったりもします。
また、想定外の出来事で思考や行動が混乱したまま一時的に統制が取れなくなることがあります。いわゆるパニック状態(メルトダウン)といわれるものです。
精神的に追い詰められ、ストレスが極限に達した時に起きることが多いです。感情を爆発させてしまったり、いつもできていることができなくなったりします。
具体的には、急な予定変更や段取りがつけられないなど予測できない状況に対する不安から起きることが多いです。また、感覚過敏から情報量が多すぎてオーバーフローしてのメルトダウンも起こります。
別のパターンとしては、衝動性の抑制が利きにくいタイプの方で、ささいなことからカッとして暴言を吐いてしまうことがあります。また攻撃的になってしまう方もおられます。
発達障害の種類
発達障害には、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)など、さまざまな種類があります。それぞれの障害には特有の特性があります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
言語・認知の能力にはあまり遅れはありませんが、以下の3つの特性があります。
①社会性の障害
・その場の空気を読むことができない、時と場合に合った言葉遣いや服装ができない
②コミュニケーションの障害
・一方的でまとまりのない話をする、冗談を真に受ける、表情が乏しい
③社会的想像力の障害
・他人の感情が理解できない、経験したことがないことを想像できない、こだわりが強い
注意欠如・多動性障害(ADHD)
ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」などといった特性が強く現れる障害です。そのため、社会生活に支障をきたすこともあります。
特性の現れ方により次の3つのタイプに分けられます。
①不注意優勢型
・気が散りやすく集中できない、忘れっぽい、物事の順序だてが苦手
②多動性・衝動性優勢型
・落ち着きがない、カッとなりやすい、思いつきで行動してしまう
③混合発現型
・順番を待てない、友達にちょっかいを出す
ADHDは不注意と多動性・衝動性両方の特性を持つ人が多く、80%がこのタイプと言われています。
学習障害(LD)
学習障害とは、知的な遅れがないのに、「読み」「書き」「算数」などといった能力の一部に困難が生じる障害です。認知に偏りがあると言われています。つまり、脳から正しい情報を引き出せなかったり、情報を引き出すのに時間がかかったりするために起こると考えられています。
文字を正しく書けない、会話は普通にできるのに書かれた文章はスムーズに読めない、簡単な足し算や引き算も指を使わないとできないなど現れ方はまちまちです。
発達障害と職場での問題
発達障害を持つ人々は職場で様々な問題に直面します。これらの問題は、コミュニケーション、組織力、タスク管理などの難しさから生じることが多いです。
コミュニケーションの問題
発達障害を持つ人々は、言葉の理解や使い方、非言語的なコミュニケーション(ボディランゲージ、目の接触、表情)、他者の視点を理解することに困難を感じることがあります。
これは、職場でのチームワークやコラボレーションに影響を及ぼす可能性があります。
言葉の理解と使用
言語能力が高く、とても饒舌な方もおられます。しかし、発達障害のある人は相手に合わせたり、長い話を聞くのが苦手としています。それに加え、たとえ話やあいまいな表現が理解できず、自分の言いたいことを一方的に話してしまうこともあります。
ASD、ADHDの各タイプによって下記の特徴がみられます。
【ASDタイプの人の場合】
相手の話の意図を理解したり、様々な情報から要点をまとめ、大事なポイントだけ読み取ったりすることが苦手と言われています。また、相手の声のイントネーションなどから話し手の感情を感じ取ることも苦手です。話が長くなると、要点を汲み取れないこともあります。
【ASDタイプの人の場合】
注意力や記憶力といった認知的な能力の弱さが影響し、「聞き取れない」「わからない」「(言われたことを)覚えていない」という症状に結びつくことがあります。反対に、思ったことを口にするのが苦手な人もいます。 言いたいことがあっても言えなかったりします。また、強引に言われると、いやだと思ってもノーと言うことができなかったりということも起こります。
非言語的なコミュニケーション
TPO(時間・場所・場面)に合わせた服装や身だしなみに無頓着な傾向があり、人との距離の取り方も独特なことがあります。人によっては、にらみつけられている気分になることもあります。
また、話し手の表情やイントネーション、身振りなど、非言語のコミュニケーションが理解できない特性があります。理解できないだけでなく、感情の表現ができず、無表情だったりもします。その特性から、場の雰囲気を読んだり、相手の気持ちを察したりすることも苦手です。
他者の視点の理解
相手の事情や周囲の状況に興味がないため、特にそれらに意識を向けることがありません。その場その場の気分や思考のままに行動してしまいます。それは、興味の幅の狭さ、社会性・社交性の低さと、興味優先の衝動性の特性が原因となります。
また、思いついたことは口にしないと気が済まないところがあります。その特性を自覚できている人もいれば、できていない人もいます。自覚していても、上手くコントロールができず、後になって自分の行為を後悔して落ち込んでしまうこともあります。
ASDの人にとっては立場を替えて考えるのは、とても難しいことになります。状況を客観的に冷静に分析することが苦手な人が多いのです。その特性から、うまくいかないときも、その理由を把握できません。結果、被害者的に考えて人のせいにしてしまうこともあります。
組織力の問題
発達障害を持つ人々は、時間管理や計画作成、優先順位付けなどの組織的なスキルに苦労することがあります。これは、プロジェクトの進行や日々の業務に影響を及ぼす可能性があります。
時間管理
発達障害のある人は、限られた時間内に複数のことをこなすのが苦手です。ひとつのことをやるのにどれくらいの時間がかかるのか、見通しを立てることが難しいです。
また、見込みや予測が甘くなる傾向があります。「がんばれば何とか早く終わらせられる」と考えて、予定を詰め込みすぎてしまうことがあります。
あいまいな期限の伝え方(「できるだけ早く」など)では、具体的にいつなのかがわかりません。相手の切迫感もわからないので、後回しにしてしまったりします。
また、時間の経過を常に意識しながら作業をする人が苦手な人や、ひとつのことに没頭しすぎて、大切な約束の時間を忘れてしまうケースもあります。
計画作成
自分が置かれている状況を的確に判断し、手順を考えて作業を進めることが苦手とする人が多いです。他部署と連携して進めなければならない業務のやり取りを先延ばしにしまったりします。ようやく着手しても、相手の都合がつかないということが起きたりします。早めに着手しないことで、問題が起き、工程に時間がかかってしまいます。
非効率な仕事を繰り返すため、自分が考えていた以上に時間がかかってしまったりもします。その結果、肝心の納期に間に合わないという最悪の結果に陥ることにもなりかねません。
また、ADHDの人にはアイデアマンの方もおられます。しかし、思いついたことをよく検討したり、上司や仲間と相談したりせずに先走ってしまうことがあります。その結果、失敗してしまうということになりかねません。
あれもこれもできると考え、いくつもの仕事を並行してしようとします。しかし、面白そうなものに意識を奪われてしまい、肝心の要件を後回しにしてしまいます。また、地道に努力することを怠ってしまうこともあります。
優先順位付け
発達障害のある人は、どの順にどれを優先的にやるべきかを判断したりすることが苦手です。全体と部分の把握が困難で、イマジネーションの障害特性があります。
そのため、1つのことをやりだすと、他のことが目に入らなくなります。真っ先に行わなければならない業務があっても目先の業務に没頭してしまいます。それで、肝心な作業に手が回らないということになります。
また、頭の中が混とんとして、思考がまとめられなかったりということもあります。不注意の特性から、別の仕事が入ると、今までやっていた仕事を忘れてしまうということもありえます。
自分が面白いと思うことをやりたがり、面白くはないけれど必要な作業を後回しにしてしまったりということもあります。
タスク管理の問題
発達障害を持つ人々は、タスクを完了させること、複数のタスクを同時に管理すること、または新しいタスクに適応することに困難を感じることがあります。これは、効率と生産性に影響を及ぼす可能性があります。
タスクの完了
ADHDのある人のなかには、指示されたことを忠実にやるよりも、自分なりに創意工夫して、もっとよい方法を考え出すほうが高く評価されると考える人がいます。
仕事の全体像も把握できていないはじめのうちから、自己流で見当違いの工夫をしてしまい、上司から注意されるといった事態が起こり得ます。
一方、ASDのある人では、手順が明確に細かく伝えられていないと、仕事が途中で止まってしまうことがあります。
複数のタスクの管理
1つのことをやっていると、もう一方を忘れてしまいます。他のこととのバランスを考えず、そればかりになりがちです。指示がわかりやすいようにと仕事を細分化しても、それを一度に伝えると記憶容量のオーバーフローを起こします。そうなると、情報の聞き取りだけで精一杯になり、理解が全く追いついていないという可能性もあります。
つまり、スモールステップにしても、ステップを積み上げた先のゴールが高すぎれば、越えられない目標となってしまうことがあります。
新しいタスクへの適応
極度に先々の不安を強く持っていたり、過去の経験から失敗への恐怖が強く根付いている人もいます。その気持ちから「自分ができる仕事だけください」とか「失敗しない仕事をください」と要望されることもあります。また、逆に、新しい業務に挑戦したいという意志を自分で上手く伝えることができない人もいます。
事例と対策
発達障害を持つ職場のメンバーを支援するためには、具体的な対策と理解が必要です。ここでは、実際の事例を基に対策を提案します。
事例1:コミュニケーションの問題への対策
コミュニケーションの問題は発達障害者にとって一般的な問題です。特に集団での作業や会議での意思疎通に困難を生じることがあります。しかし、明確な指示やフィードバック、対話の機会の提供などを通じて、これらの問題を緩和することが可能です。
明確な指示とフィードバック
指示や注意をする時は、作業の手を止めさせ、こちらを向かせて話をしましょう。メモも取らせるようにします。指示がわかりにくそうなときは、最後まで伝えてから、復唱させたり、質問を受け付けましょう。作業の方法を見せながら説明をするときは、作業の手元に注目させるようにします。
仕事のミスや失敗などを指摘する時は、どこが間違っていたのか、はっきりと伝えます。そのうえで、同じミスを繰り返さないように原因を考えさせます。本人がどうしたらよいかわからないときはアドバイスを与えるようにしましょう。
対話の機会の提供
会議など多人数でコミュニケーションを取ると、問題が生じやすいです。聴覚障害や集中力低下、ワーキングメモリの大きさが原因で聞き取りが苦手な人もおられます。そこで、複数の人が話し出すような場面では、話し手を1人に絞るということもいいでしょう。一度、話をおわらせてから次の意見を促すようにしましょう。
また、注意がそれないように視線を合わせてアイコンタクトを取ってみましょう。視線が合わない際は名前を呼びかける、身振り手振りで会話への参加を促すなども有効です。
事例2:組織力の問題への対策
組織力の問題は、特に期限を設定したプロジェクトや多くの仕事が同時に進行する状況で顕著になることがあります。しかし、ツールや技術を用いてタスクを管理したり、明確な期限や優先順位を設定したりすることで、組織力を向上させることができます。
タスク管理ツールの使用
屋内ならアラームやタイマー、外出先では携帯電話のリマインダー機能を利用することがおすすめです。また、TO DOリストを作るとタスクの管理がしやすくなります。そのリストはすぐ確認でき、また追加もすぐできるように、パソコンならデスクトップに貼ってしまうのがおすすめです。
紙媒体でも、すぐ見ることができるところに置きましょう。また色付きの付箋などの利用もおすすめです。タスク毎に色を分ける、重要度で色を分けるなど、一旦決めた決まり通りに色付きの付箋を使いましょう。
明確な期限と優先順位の設定
発達障害のある人にとって、周囲の様子を見ながら同じように行動するということはできません。あいまいな指示だと相手の意図がつかめず、何をどうしたらよいのかわからず悩んでしまうため本人の負担になります。
仕事の指示を出す場合には、何をいつまでに、どういう手順で行うのかまで明確に指示すると、迷わずに作業を進めることができます。締め切りなどを忘れやすい人には作業の進捗状況を確認しながら、適宜リマインドしてあげましょう。
事例3:タスク管理の問題への対策
タスク管理の問題は、特に多くのタスクを同時に処理する必要がある場合や新しいタスクに対応する場合に生じることがあります。しかし、タスクの分割や順序付け、適切なトレーニングとサポートを提供することで、これらの問題を軽減することが可能です。
タスクの分割と順序付け
最初のうちは指示通りにやることを約束させます。本人が自己流の別の方法をやろうとした場合は、「仕事に慣れてきたら、もっと自分にあったやり方を採用してもよい」と伝えつつ、やり方を変える場合は前もって上司にそうだんしなければならないことをしっかり伝えておきます。
短期記憶の弱い人の場合は、指示は一度にひとつだけ、その都度出しましょう。具体的に手順を貼りだすなどの工夫が必要です。
整理整頓だけをする時間を作り、物の場所を明確にしておくことが仕事のやりやすさにつながります。
適切なトレーニングとサポートの提供
発達障害のある人は、仕事でも言動でもどうしたらよいのか、何が求められているのかを理解していないことがあります。周囲の人は、言葉できちんと説明するようにしてください。何がどれくらいできているのか、言動については何がよくて、何がダメだったか具体的に伝えてください。
その時に、できていないことだけを指摘されると、本人が委縮してしまいます。できなかったことについては、穏やかな態度で指摘してください。なぜできていなかったのか、どうすればできるようになるのかを具体的に示すことが大事です。
1つ1つの指示について、その意味を説明することが大事です。理解できているか反対に解説してもらうなど、やるべきことを本人の中で理解できているかの確認が必要です。また、実際に本人の理解度に合わせて「やってみせる」ということも有効です。手本の通りに何度か繰り返してやってもらうことでできるようになります。
まとめ
- 発達障害の特性は職場でのコミュニケーションやタスク管理に影響を与える可能性がある
- 発達障害の方は非言語的なコミュニケーションに困難を感じることが多い
- 時間管理や計画作成、優先順位付けなどの組織的なスキルに苦労することが多い
- 感情を適切に表現するのが難しく、これが誤解やコミュニケーションの障害を引き起こす可能性がある
- 職場でのタスクやコミュニケーション方法として、視覚的な手段で指示を出す、明確な期限を設定するなどの工夫が大切
- 定期的なフィードバックと進捗確認を行い、当事者の方のパフォーマンスを明確に理解させることが重要