効果的な伝え方の技術
発達障害を持つ人々への伝え方は、本人が理解しやすい方法で行うことが重要です。ここでは、そのための具体的なテクニックの例を解説します。
肯定的な表現を使う
作業手順の説明をしたり、本人へ注意を促すときに「~してはいけません」「~は禁止です」などの否定的な表現を用いると、結局どうすればいいのかわからなくなってしまうことがあります。「~してください」に表現を統一する、あるいは否定的な表現の後に「どうすればいいのか」を明記しておくことが重要です。
また 否定的な表現を使うことで、本人が「責められている」「叱られた」と感じる場合もあるので、注意が必要です。
例)荷物を床に置いてはいけません
【正解例】
・荷物は床に置かず、隣の椅子に置いてください
明確かつ具体的に伝える
発達障害の人にとって、曖昧な表現を用いたコミュニケーションはとても難しいです。「急ぎ目に」や「多め」などの表現では、お互いの認識がずれてしまうためにミスやトラブルが起きてしまうことがあります。
また、「ホチキス止めをする」「コピーした資料を全員に配る」「配り終えたら上司に報告する」などの決められた工程があれば、それも必ず伝えます。作業手順が多い場合や、同じ作業を何度も頼むことがある場合は、マニュアルを作成して確認しながら作業を進められるようにすることも良い工夫です。
例)この資料、急いで適当に印刷して配っておいて
【正解例】
①この資料を十部印刷してください
②印刷が終わったら、ホチキスで止めて全員に配ってください
③終わったら、私に報告してください
視覚的支援と書面でのコミュニケーション
話を聞いて自分で要点をまとめることが難しい、メモを取ることが苦手などといった特性によって、伝達事項を把握できていない、作業手順を間違えるといったミスが生じることがあります。
この場合、大切なのは「視覚的なコミュニケーションを取ること」です。
例えば、チャットツールを活用して作業の手順や期日などの詳細を送ることで、いつでも作業の内容を確認できるようにします。また、複雑な作業に対しては 図表を用いたマニュアルを作成することで、本人が読み返しながら一人で作業を進められるような状態にします。
<視覚的なコミュニケーション方法の例>
・マニュアルを作成する
・チャットツールを活用する
・図や表を使って説明する
実演と例の提示
作業手順を説明した後に、実際に作業している様子を確認してもらうことも重要なポイントです。あるいは、説明後 本人に一度実践してもらい、一緒に作業手順を確認することも有効な手段です。
また、作業手順を説明する際には例を挙げることもより効果的な方法です。予想できるトラブルなどがあれば、思いつく限りマニュアルに説明を加えます。そうすることで、どのように対処すればいいかわからず、作業中にパニックになってしまう可能性を減らすことができます。
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タスクの変更とミスへの対応
職場では、タスクの変更やミスの訂正が必要になることがあります。発達障害を持つ人々にとって、これらの状況は特にストレスを感じます。適切な対応をとることで、本人のストレスを緩和し、回復を早めることができます。
作業手順の変更
作業手順を変更する場合、変更点の明確な説明とサポートが必要です。これまでのやり方からどの部分が変更されたのか、はっきりと説明することが重要です。
また、発達障害を持つ人の中には、これまでのやり方を変更されることに苦痛を感じる人も多くいます。そのため、「なぜ変更する必要があるのか」をきちんと本人に説明することも重要です。本人が作業手順の変更に納得することで、苦痛が軽減される場合も多くあります。
・変更点を明確に説明する
・変更された理由を伝える
・作業手順の変更による苦痛は できるだけ緩和する
ミスの訂正
ミスが発生した場合、本人を一方的に叱るだけでは改善することはできません。また、「もう少し気を付ける」「できるだけ注意する」などといった本人任せの改善策では、ミスを再発してしまう可能性が高いです。正しい方法を穏やかに説明し、再発防止のための案を話し合います。
例えば、作業手順の認識違いが原因である場合は、マニュアルを修正して対応します。また、本人が報告を忘れた、期日を覚えていなかったなど、不注意によるミスの場合は、リマインダーアプリの使用や、上司からの確認回数を増やすなどのシステム的な予防策を考えることが必要です。
・本人を一方的に叱らない
・正しい方法を穏やかに説明する
・ミスの予防策はシステム的に考える
発達障害者の職場でのサポート
発達障害を持つ人々が職場で成功し、成長するためには、適切なサポートが不可欠です。ここでは、そのための具体的な方法を解説します。
継続的な学習と適応
周囲の人々が障害について学び、理解することは、発達障害を持つ人とコミュニケーションを取るためにも重要です。そのためにも、社内研修などを通じて障害理解を深めることが大切です。また、本人の同意が得られる場合は、自分の困難や行ってほしい手助けについて説明してもらうことも有効な手段の一つです。
・社内研修などを行い、障害理解を深める
・本人から自分の障害や行ってほしい手助けについて説明してもらう